紫波ICの近くにある田んぼのど真ん中にポツンと建つ家。そこがマルツ工房デザインファクトリーです。
「普通のデザイナーは絶対にやらない遠回りを自分はやっている。それくらい1つの作品に魂を込めている。」
というマルツ工房代表の吉田つとむさん。
1時間程度の取材のはずが、2時間に延長されるほど盛り上がりました。
岩手県の商品には吉田さんのデザインが必ずある
マルツ工房 デザインファクトリー
Q.
いろいろなグッズをデザインしてらっしゃいますが、頼まれて作ることが多いのでしょうか?
吉田さん(以下、敬称略):
オリジナルグッズも作っていますし、ベアレンビールさんや福田パンさん、いわて銀河鉄道、いしわりさんなど、岩手県のお仕事も多いです。
吉田さんデザインのベアレングラス
アナログを何よりも大切にしている
Q.デザインする上で「これだけは譲れない」ということはありますか?
吉田:
「違和感を消す」ということです。
作ったものに違和感を感じたら、1mmでも妥協しません。
例えばTシャツですが、着ていない状態ではOKだとしても、実際に着たときに違和感を感じたら即修正します。
デザインのプロにそれを話すと「それじゃー時間かかるでしょー!」って言われますよ(笑)
自分でも遠回りなことをやっているとはわかっていますが、直感を信じています。
デザインは違和感を消す作業だと思ってるんです。ちょっとでも違和感があるのが許せない。
心の声をずっと聞いて直感に従っています。
デザインも何十パターンも作って1回忘れることもあります。
人間関係も同じで、こいつといるとワクワクするかなどを考えますね。
パソコンのソフトでは作れないデザインを作りたい
Q.デザインするときに気をつけていることはありますか?
「自分にしかできないデザイン」をすることですね。
文字も毎回手書きでやっています。
それでこそ自分の味が出るし、そこまでやれば自分にしか出せない味になる。
自分にしかできないデザインということを常に考えてデザインしています。
今なら、一見センスのいいオシャレなものなら、パソコンのソフトを使えばある程度は誰でもできちゃうんですよね。
だからぼくはアナログを大切にしています。
世界へ発信することも視野に入れている
Q.
吉田さんはどこまで作品を広げたいと考えていますか?世界へ発信することは考えていますか?
吉田
マルツ工房を始めてからずっと海外もマーケットにしています。
世界中とまでは言わないですが、人種も国も限定はしていませんね。
日本も海外も関係なく、このデザインを気に入ってくれる人がいるといいなと思ってます。
そこには岩手県だからという「この地域が特別」というのはありません。
18年間探してやっと見つけた仕事
Q.デザイナーになろうと思ったキッカケはなんですか?
吉田:
偶然見つかったシゴトです。
いろんな仕事を片っ端からやっていて、30〜40種類は職を変えていました。
18年間「なんか違うなぁ・・・」と思い続けていたので辛かったですね。
たくさんお給料をもらっていても、違和感を感じたら辞めることを繰り返していました。
ある日、友達と遊んでいたときに「子供の頃は何が一番好きだったの??」と聞かれたんですが、そのときに絵を描くことが好きだったと言ったんです。
そしたら、「それ仕事にすればいいじゃん」って言われたので、つべこべ言わずに作ってみようと思ったんです。
それで、鉄瓶をデザインした時に、体に電気が走りました。
一瞬で「自分はこれを仕事にしていくんだ」と確信したんです。
初めて地に足がついた感覚です。
それまでずーっと暗闇の中にいたんですが、初めて光を見た気分でしたよ。
「天下取ったどー!」ってまだ何も始まってないのに叫びたい気分でした(笑)
今思い出しても不思議な感覚ですね。
吉田さんが作業するときによく聴くCD
子供たちにはその感覚になるまで探せと言いたいですね。
違和感をいつも感じている人は、答えがあるから悩んでいるんです。答えがある人は悩まないです。
今までは仕事を聞かれても「旅人」としか答えられなかったんですが、これでお金儲けできなくても胸を張って歩けると思いましたね。
すぐにデザインのシゴトを始めました。資金2万円から始めて、初月含めて赤字に1度もなっていないんですよ。
それは自分に合う仕事に妥協しなかったからだと思っています。
18年間、人よりも暗黒の世界にいたから帳尻が合っているんじゃないかな〜と思っています。
どんな人でも役に立てることはある
マルツ工房はネットショップもやってるんですが、パソコンが詳しい知り合いにお金を払ってお願いしています。
主婦の方にもステッカーを切って袋に詰める作業をお願いしています。
どんな人にも役に立てることはあると思っているので、その手助けができればと思ってます。
Facebookページ:マルツ工房
ブログ:マルツ横丁(みんなのマルツ工房)
※取材 2016年6月
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